九重山 1988年6月5日 |
長者原〜雨ガ池越〜坊ガツル〜大船山〜坊ガツル〜法華院温泉〜スガモリ越〜長者原 |
以前、鹿児島に住んでいたことがあった。わずか2年間ほどだったが、初めての単身赴任だった。これは取りも直さず九州地方の植物が観察できる絶好の機会が与えられたということだった。その時真っ先に頭に浮かんだのは九州地方の山々を美しいピンクの花で染め上げるミヤマキリシマの群生だった。 ミヤマキリシマで有名なところは阿蘇山、雲仙岳、霧島山など数々あれど、やはり九重山の群生地は必見であると常々考えていた。実現したのは1988年6月のことだった。 ミヤマキリシマ観賞ツアーに参加して鹿児島から夜行バスに乗り、明け方に長者原に到着した。まだ夜も開けきらぬうちからチラホラと登山客が集まり始めた。さすがにミヤマキリシマの開花時期には登山客が多いことがうかがえた。。 長者原から大船山を目指す登山道は2通りあるが、行きは雨ガ池越コース、帰りはスガモリ越コースを採った。坊ガツルまでは大した上り下りではなく、本格的な登山はこれから先だった。大船山の登り口から徐々に高度を上げていくと次第に展望が開けていった。それと同時にミヤマキリシマの花が現れ始めた。期待したミヤマキリシマはまだ開花始めの様子で、全山がピンク色に染まる絶景は残念ながら見られなかった。それでもところどころで咲き始めた花の美しさにしばし見惚れてしまった。加えてミヤマキリシマの背後にそびえる三俣山、平治岳、九住山などの雄姿や由布岳の遠望まで満喫でき、この上ない素晴らしさだった。 ミヤマキリシマに目を奪われて他の植物が見落とされてしまいそうだが、この時期にはツツジ科の植物が多く観察できるのもこの地域の特色だった。シロドウダン、ツクシドウダンなどが咲いているのが確認できた。足元で微笑んでいるイワカガミもつらい登りを慰めてくれた。 |