渋川(静岡県)        1993年〜2003年       
渋川温泉、渋川つつじ公園、枯れ山など
 静岡県から愛知県の県境付近には蛇紋岩で構成された地域が点在している。その一つである静岡県引佐町の渋川は県の自然環境保全地域に指定され特有な植物が生育している。
 代表的な種はシブカワツツジで5月中旬から6月上旬頃に開花する。三重県の蛇紋岩地帯に分布するジングウツツジの変種とされる。開花時期には「渋川つつじ祭り」も開催され、多くの人々がシブカワツツジの花を愛でるために訪れる。渋川つつじ公園と渋川温泉付近には本種が群生している。紅紫色の艶やかな花を幾つも咲かせ際立っている。どちらも植生は似ていて、この時期にはコゴメウツギホオノキコアジサイなどの樹木が花をつけている。林内や林縁にはカザグルマ、シライトソウ、カキノハグサ、ナガバカキノハグサ、シソバタツナミ、ヨウラクランなどが咲いている。
 シブカワツツジが咲く1ヶ月ほど前にはヒロハドウダンツツジが白い花をいっせいに吊り下げて賑やかだ。ツクバネウツギ、ヤマブキ、ハナイカダ、コバノガマズミの花も見えている。足元にはナガバノタチツボスミレ、フモトスミレ、タチキランソウ、フデリンドウ、ミツバツチグリ、ヒメカンアオイが目にとまる。数は少ないもののカタクリの花も見られる。またこの付近にはギフチョウが生息している。運がよければ可憐に舞う姿を観察できるかもしれない。
 初夏から秋にかけてはササユリ、ガンピ、ホトトギス、シブカワシロギク、シブカワニンジン、タカクマヒキオコシ、アケボノソウ、ヤマニガナ、ナガバノコウヤボウキ、スズカアザミなど色とりどりの花が次から次へと咲き続く。シブカワシロギクとシブカワニンジンはそれぞれサワシロギクとツルニンジンの蛇紋岩適応型と考えられている。晩秋にはヒロハドウダンツツジの紅葉も見事である。
 渋川には蛇紋岩地特有の植物が自生し、非常に興味深いところである。
シブカワツツジ
カキノハグサ
カザグルマ