木曽谷              2015年5月25日
ヒメシャガの巻
 長野県には北アルプス、中央アルプス、南アルプスなどの山岳地帯が多く連なる。木曽谷には中央アルプスと御嶽山系の山々の間を流れる木曽川によって形成されたV字谷地形が続いている。急峻な渓谷では特徴のある植物が観察できる。どちらかといえば日本海側に分布の中心を持つヒメシャガもその一種である。
 木曽谷の渓流沿いにはヒメシャガの見られる場所があると知り探しに行くことにした。シャガが林内に群生するのに対して、ヒメシャガは山地の岩場に生える。渓流沿いの登山道を歩き、隈なく探してみた。背景に水の流れる渓谷を入れて撮影したいと探してみるが、なかなか思うように撮影できなかった。山側の岩場には花はふんだんに見られるものの、水辺側の岩場では株が少なかったからだ。結局、最初の場所とは別の異なった渓流沿まで移動して、やっと撮影できた。シャガと比べてやや色濃いヒメシャガの花が微笑んでいた。
 樹木では他にホオノキが目立った。大きな花が幾つも開いていた。直径は15cm以上もあろう大きな白い花は遠目でもよく目を引く存在だった。白色の花では他にはヒメウツギやエゴノキの花が見られた。これらの花は一つ一つは小さいもののまとまって鈴成りに咲いていることから、同様に目に留まる存在だった。同じく白色と言えばトチノキの花が川沿いで豪華に咲いて印象深かった。
 登山道わきで興味深かったのはツクバネの花が見られたことだった。高さ1-2mの半落葉低木で枝先に小さな緑色の花をつけるが、目立たない存在だった。むしろ羽根つきの羽根とそっくりな果実になった時のほうが目立つだろう。道沿いにはシロバナニガナもちらほらと咲いていた。ヤマツツジが美しく咲いて渓谷を彩っている場所があり、美しい滝と相まって見る価値があった。
 山里の田んぼの畔などではアヤメ、ノアザミ、ヒナマツヨイグサ、ワスレナグサ、アカツメクサなどが花盛りだった。
 数年前には伊那谷の植物を観察してきたので、今度は木曽谷の植物をもっと広く観察に出向きたいものだと思った。
渓流の岩場に咲くヒメシャガ
ホオノキ