紀伊半島 2003年10月12日,1997年10月21日,2000年11月19日,2003年11月22,23日
大王町、熊野市、串本市、白浜町など
 紀伊半島は広大な半島で2000mに近い山岳地帯から海岸まで変化に富んだ植生が見られる。南部には襲速紀要素の植物が分布するなど特徴的な植物相帯が広がっている。ちなみに襲とは熊襲で南九州一帯、速は速水瀬戸、紀は紀伊地方を指し、西南日本の植物相帯を示している。今回は秋に咲くキクの仲間を中心に紹介する。
 キノクニシオギク--秋になると海岸の岩場などを黄色く彩り群生するキク。志摩半島から紀伊半島の先端を回り和歌山県の日御碕までの海岸に分布する。関東地方から静岡県の御前崎まで分布するイソギクと四国に分布するシオギクの中間的な形態をしている。大王崎、熊野市、白浜などで数多く見てきている。この時期にはアゼトウナ、ハマアザミ、ナワシログミなどの花が同時に見られる。またサネカズラマルバシャリンバイモチノキなどの実が鮮やかに色づき始めている。
 タイキンギク--堆金菊の名前のように黄金色の花があふれんばかりに着く様子は見事だ。三重県南部から和歌山県南部の海岸の崖などに見られるが串本付近に多い。高知県にも分布していて観察したことがある。
 クルマギク、キシュウギク--山地の渓流の岩場などで見られる。クルマギクは川岸の崖から垂れ下がり長さ1m弱にもなるのでその形態が面白い。葉の細いキシュウギクも岩場に生えるが高さは30cm程度で草丈の小さいものが多いようだ。
 キイジョウロウホトトギス--黄色い花が鮮やかなホトトギスの仲間。花着きが良い株が群生していると豪華な感じがする。限られた岩場に自生しているが手の届く範囲にはもはや見られない貴重な花である。手の届かない崖の上にはまだ残っている。
 その他、キイイトラッキョウなど紀伊半島を中心に分布する植物が数多く見られ興味深い植物相を呈している。
海金剛(串本市)
クルマギク
キノクニシオギク
タイキンギク