高隈山         1987年9月12日、1999年10月1日
スマン峠登山口〜スマン峠〜小箆柄岳(往復)、猿ヶ城林道など
 黄色いホトトギスの仲間は九州地方に多く分布している。キバナノツキヌキホトトギスは尾鈴山、キバナノホトトギスは宮崎県、そしてタカクマホトトギスは大隅半島に分布する。いずれのホトトギスも生息地域が限られた希少種である。
 鹿児島に住んでいた頃、手始めに高隈山に咲くタカクマホトトギスを観察することにした。地図上で最短距離で大箆柄岳に登頂するコースを探したところ、スマン峠登山口からのコースが適していると判断し向かった。
 ところが車で山道を走っている時にタイヤが泥濘にはまり込んで動けなくなってしまった。人も車もほとんど見かけないような山奥なので、考えようによっては一大事なのだが、不思議と動揺は少なかった。近くに工事現場の資材置き場があり、板、布切れなどを拝借してタイヤの下に敷き、簡単に脱出できてしまった。
 やや時間をロスしたため、山頂まで登らず途中で引き返すことになったが、お目当てのタカクマホトトギスとは湿った場所で対面することができた。気品に満ちた黄色い花が出迎えてくれた。
 林下には葉緑素を持たない腐生植物であるキリシマシャクジョウがひょろひょろした感じで生えていた。赤いキノコのようなツチトリモチも見かけた。他にはコフジウツギ、シュスラン、ママコナ、ツクシミカエリソウ、スズコウジュ、アキノタムラソウ、ガンクビソウ、ヒメガンクビソウ、キガンピなどが見られた。
 1999年に同じコースで出向いたところ、林道がかなり手前で通行止めになっていた。仕方なく猿ヶ城林道を歩いて渓谷沿いの植物を観察することにした。林道脇の崖にはコモチシダが斜面を覆い尽くすほど生い茂っていた。タカクホトトギスは湿った場所の所々で咲いていた。またホトトギスも花をつけていた。野生化したボンテンカの赤い花が咲いているのを見かけた。
 高隈山の植生の豊かさに驚かされたものだった。
キリシマシャクジョウ
タカクマホトトギス