野間半島、野間岳  1987年10月18日、1988年10月8〜9日、11月13日
大浦町、笠沙町、野間岳
 野間半島は鹿児島県の薩摩半島の南西端にある東シナ海に突き出した半島で野間岳が位置している。この付近の笠沙町、大浦町は暖地性の植物が多く観察できる面白い地域である。
 10月の大浦町の海岸では秋の植物が顔をそろえていた。ホソバワダンは岩場に黄色いアクセントを付け、ヒメハマナデシコは夏が最盛期だがまだ花を残していた。ボタンボウフウ、クサスギカズラ、ボンテンカなどの花も見られた。花は目立たないが果実が裂開したコクテンギは鮮やかだった。また夏には数は少ないがハマボウやメヒルギの花も観察できるところだ。
 笠沙町まで来るとオイランアザミが群生する美しい海岸があった。草丈が高く立派なオイランアザミが海を背景に艶姿を見せていた。後に護岸工事で失われてしまったのは残念だった。
 野間岳は鬱蒼とした常緑樹林に覆われた山で標高591mであるが中腹まで車道が通じていた。この時期ならではの変わった形態の植物が観察できることを楽しみにして登った。林中にはシュスランカゲロウランなどのランの仲間が現れた。良く見ると赤いキノコのようなツチトリモチや目立たないがキイレツチトリモチも落ち葉の中から顔を覗かせていた。さっそく写真を撮影したが林内は暗いためストロボの力を借りた。11月に訪れた時にはヤッコソウを目にすることもできた。この種も奴さんの形から名前の付いたユニークな植物である。
 11月になると笠沙町はサツマノギクの花で溢れかえっていた。海岸付近では自生株がたくさん花をつけていた。町花でもあり植えられた立派な株も至るところで散見された。ツワブキ、シマカンギク、ヤクシソウ、リンドウ、ツルソバなども負けじと咲き競っていた。
 秋の南薩摩路はここまで来なければ見られない特徴のある花々が咲き乱れ、興味の尽きない所であった。
オイランアザミの群生する海岸
サツマノギク
ツチトリモチ
シマカンギク