敦賀          2007年9月17日
中池見湿地
 福井県敦賀市には市街地近郊にありながら貴重な自然が残された湿地がいくつかある。そのひとつ中池見湿地は四方を低山地に囲まれた耕作放棄水田に形成された湿地で豊かな植物相を呈している。代表的なものとしてミズニラ、デンジソウ、サンショウモ、ミズトラノオ、ミズアオイ、カキツバタなどの湿生植物が数多く生育している。また国内屈指のトンボの生息地でもあり、いわゆる里山の自然が残された貴重な地域である。以前天然ガス基地建設の計画が発表された後、自然保護のため反対運動が起こり計画が撤回されたことでも知られている。湿地保護の活動は現在でも続けられている。
 入り口は余座方面でここには駐車場があり、ちょっとした起伏を越えて湿地へと入った。この時期に訪問した一番の目的はまずミズトラノオの群生を観察することにあった。湿地に設けられた木道を歩き出すとすぐにミズトラノオの群生が目に飛び込んできた。予想以上の群生に思わず写真を撮りまくってしまった。ツユクサ、イボクサ、サワヒヨドリ、ミソハギなどの脇役も見逃せない良い味を出していた。青紫色の花のミズアオイ、白色の花のオモダカ、黄色い花のチョウジタデなどは休耕田跡でのびのびと育っていた。
 その他よく見られる里山の草花たちもなぜかここでは活き活きとしている印象を受けた。アキノノゲシ、ツリガネニンジン、ミゾカクシ、ユウガギク、キツネノマゴ、ヤブツルアズキ、クサネムなど。またサンカクイ、ミズガヤツリ、コアゼガヤツリ、ケイヌビエなどの実が目立ち、ヨシやヒメシダが繁茂している場所もあった。特徴的な植物はまだまだ数多く、コシロネヒメサルダヒコアズマカモメヅル、ヒメジソなど多彩だった。
 湿原の奥までは入れないようになっていたが植物の観察には十分だった。湿原の端では実際に水稲が作付けされていた。ウェットランドミュージアム、茅葺農家などが建てられ人手が加えられているものの田舎の原風景を垣間見ることができ、自然観察には最適ともいえる地域であった。 
ミズトラノオの群生
デンジソウ