御岳山(東京都) 2000年4月29日 |
ナガバノアケボノスミレの巻 |
スミレの交雑種はいくつか知られている。交雑種の形態は両親の中間の形態を持つことになるが、その程度は一様でないため、交雑種なのかどうかの判別が難しいものも多い。 その点、葉に切れこみがある種との交雑種は見分けやすい。オクタマスミレ(エイザンスミレXヒナスミレ)、カツラギスミレ(ヒゴスミレXシハイスミレ)、スワスミレ(エイザンスミレXヒカゲスミレ)などが両種の混生する地域で見つかっている。これらの交雑種はまだ見てきていないが、阿蘇ではスズキスミレ(スミレXヒゴスミレ)を観察してきた。 また同じタチツボスミレ類同士の交雑種となると見分けが難しいが、ムラカミタチツボスミレ(タチツボスミレXオオタチツボスミレ)を見つけたこともあった。 ナガバノアケボノスミレはアケボノスミレとナガバノスミレサイシンの交雑種である。御岳山周辺にナガバノアケボノスミレが自生していることを知ってからは、観察に出かける機会を待ち望んでいた。当地では花の色はアケボノスミレに似た鮮やかな紅紫色のものから白色に近いものまで様々なものが認められた。葉の形は両親の中間的な形態をしていた。付近には両親であるアケボノスミレやナガバノスミレサイシンが自生していたので間違いないであろう。 また通常、交雑種は結実しないが、ナガバノアケボノスミレのように両親が根で増える傾向がつよいものは大きな群落をつくることもある。今回撮影した場所では小規模ながらも群生していた。 そのほかにはタチツボスミレ、フモトスミレ、アカネスミレ、マルバスミレ、ツボスミレなどを所々で見かけた。 春先の木々の芽吹きはすがすがしく、陽光に映えていた。加えてヤマザクラやミツバツツジの花が彩りを与え、目立たないけれどもクロモジの花が満開となり、穏やかな青空の下で充実した散策を遂行することができた。 |