紀伊半島 2014年5月25日 |
チョウジソウの巻 |
海跡湖とは、かつて海であった場所が,外海から隔離されてできた湖や沼沢をさす。砂洲や砂嘴が発達してできた場合が多いとされる。紀伊半島の東海岸には小さな海跡湖が点在している場所がある。中には人が容易に近づけないような場所もあり、貴重な植物の自生地となっている。そのひとつの海跡湖の旅に出かけた。 海跡湖と密接に結びついている植物にハマナツメがある。海跡湖周辺の湿地に見られるのだが自生地が限られ絶滅危惧U類に指定されている。訪れた場所では予想した以上に繁茂して海跡湖の周囲に群落を形成していて驚かされた。もっと弱々しい植物なのかと思っていたが、根元からトゲを纏った枝を放射状に斜上させて強靭な感じさえ与えていた。今回は花期ではなかったので改めて訪問したい。 さて、湖畔の湿ったところにはお目当てのチョウジソウが群生していた。低地の河川のほとりの低湿地や湖畔の湿った草原に生えるが、開発などの影響を受け、自生地が減少している。現に愛知県内では見られず、他県まで出向いたわけである。淡青紫色の花は何とも風情があり美しいものだった。 次に湖畔で目だった植物はスゲの仲間だった。フサスゲがかなり広範囲に認められた。ここでは優占種のようであった。湿地からやや乾いた草地にまで広く生えていた。より水辺に近いところに見られたのはツクシナルコだった。こちらは絶滅危惧TB類に属す貴重種だった。個体数が少なく、良い状態の植物体と果穂を同一画面に撮影して収めることができなった。再度撮影し直したい。 水面に浮かぶヒツジグサの白い花が早くも咲き出して初夏の気配を漂わせていた。林床で目立たずに花を咲かせていたのはオモトだった。コバノタツナミの花がちらほら咲いていた。オオバライチゴの赤い果実も色鮮やかだった。ハマグワの実も色づき始めていた。周囲の林縁ではスイカズラ、ウツギ、センダンの花が満開だった。 海跡湖の旅はまだまだ続きそうな雰囲気だった。 |