加賀         1992年4月25日、1996年4月26日
イソスミレの巻
 日本海側には太平洋側とは異なる植物が分布している。例えばイソスミレは北海道の南西部から本州の主として日本海側の鳥取県まで分布している。アナマスミレはスミレの海岸型で礼文島から鳥取県までの日本海側に知られている。これとは逆にスミレの海岸型であるアツバスミレが太平洋側に分布して住み分けている。またノギクの仲間ではダルマギクやハマベノギクが日本海側を主として分布する種である。
 さてイソスミレは海岸の砂浜に生える種で以前は各地で大規模な群生が見られたようである。ところが最近ではこのような群生はほとんど見ることができなくなってしまった。砂浜が開発されてなくなってしまったり、生育条件が悪くなり減少したことなど様々な要因が挙げられる。
 初めてイソスミレに出会ったのは1992年の春だった。その当時の様子は写真で示したように想像をはるかに超える規模の群落が広がっていた。足の踏み場もないほどの群生と言っても過言ではないほどだった。点々と大きな株が所狭しと砂浜に広がり、薄紫色の花をふんだんに咲かせていた。
 小さな株に不釣合いな程大きな紫色の花をつけたアナマスミレも小規模ながら群生していた。ハマダイコンの淡紅紫色の花がそよ風になびく姿やヒョロ長く伸びた茎先に白い花をつけるハマハタザオが点在する様も春の海岸風景に良くマッチしていた。花の時期ではないがカワラヨモギやハマゴウが群落を形成しているところもあり、一部にはハマナスも自生していた。穏やかな日差しの下で乱れ咲く花々を時を忘れていつまでも眺めていたものだった。
 ところがこのイソスミレの群生も今では見ることができない。1990年代までは群生が見られたものの、2000年代に入り夏の猛暑や砂の堆積などにより激減してしまったとのこと。もうこのような景観が見られないと思うと残念でならない。 
イソスミレの群生
ハマダイコン
アナマスミレ