居谷里湿原     2000年5月13日
湿原入口〜ハンノキ小径〜かさすげ橋〜居谷里神社〜湿原入口
 長野県大町市にある居谷里湿原は木崎湖から少し山中に入ったところに存在している。山中にひっそりと広がる湿原地帯で湿原を一周できる遊歩道が設けられている。植物観察会に参加して当地を訪れたのは2000年5月中旬のことだった。
 遊歩道沿いには春の花がたくさん観察できた。特にスミレの仲間が多く自生していて驚かされた。ツボスミレ、ムラサキコマノツメ、タチツボスミレ、オオタチツボスミレ、サクラスミレが所狭しと咲き出していた。特にここのサクラスミレは葉脈が赤くなったチシオスミレと呼ばれる型が多く見られた。雑種のムラカミタチツボスミレ(タチツボスミレXオオタチツボスミレ)と思われる株も見つかった。
 さらに奥に進むと待望のゲンジスミレが現れた。白を基調としてほのかにピンクに染まったこじんまりした花をつけ気品に溢れていた。アカネスミレ、マルバスミレ、ヒナスミレ、マキノスミレも加わり、まさにスミレの花園を形成していた。マキノスミレは東海地方で見る花と比べて、あまりに小さく別種かと思われるほどだった。
 スミレ以外の植物に目を向けると、湿原の入り口付近にはサワオグルマが咲き始めていた。6月には見事な群生が見られるという。湿原の中ほどにはハンノキ林が広がりその根元を埋め尽くすミツガシワの群生には思わず足を止め佇んでしまった。白い花が湿原を占有している様子は圧巻であった。これら以外に同時に観察できた植物は花が終わりかけのミズバショウやザゼンソウ、リュウキンカ、ウスバサイシンミツバツチグリなどであった。
 ところでこの湿原にはハナノキが自生しているという。愛知県、岐阜県、長野県の三県の境付近を中心に分布しているが、この大町市の湿原にも隔離分布しているのは興味深い。花の時期は5月上旬なのでぜひ見に訪れたい。
ミツガシワの群生
ゲンジスミレ
ヒナスミレ
チシオスミレ