八ヶ岳        2010年8月20日-A
エンビセンノウの巻
 夏の終わりに八ヶ岳に登ってみようと思った。この時期には、まだ出会っていない植物が数多く残されていたからだった。
 たとえばエンビセンノウである。北海道と本州の限られた地域の湿地に生息するセンノウ属の仲間である。サンノウ属ではセンジュガンピの白色の花を除けば他の種は紅橙色、朱赤色などの鮮やかな美しい花である。フシグロセンノウ、オグラセンノウ、マツモトセンノウなどが挙げられる。中でもエンビセンノウは名前のとおり花弁が深く切れ込んでツバメの尾のように見える特徴がある。
 八ヶ岳山麓の緩やかな流れの小川の畔や湿地状の地形の場所にエンビセンノウは咲いていた。花弁が強烈な紅橙色で鮮やかなためよく目だっていた。花をつぶさに観察すると、きれいに花弁が開いているものばかりではなく、痛んだものが数多く認められた。個体数も限られていてきれいに整った花を探すのが難しかったほどだった。
 湿地にはその他に様々な植物が観察できた。エゾミソハギが群生する湿地の背後には白い樹皮のシラカバ林が展開されコントラストが見事なところがあった。ナガエミクリが所狭しと群生して白色の花を咲かせているところもあった。大きくて鮮やかな紅紫色のアサマフウロが大胆に花をつけているところもあった。紫色の花を何段にもつけたサワギキョウが林立しているところもあった。
 他に見られた植物はカンガレイ、コマツカサススキ、サワヒヨドリ、オニスゲ、アブラガヤ、ヒロハノドジョウツナギ、コオニユリ、ヤマクルマバナ、コガマ、クサレダマ、ヒメシロネ、アケボノソウ、アカバナ、ハンゴンソウ、コバギボウシ、タチフウロ、タカトウダイ、ノダケ、フシグロセンノウ、ユウスゲ、ツルマメ、ノコギリソウ、ワレモコウ、ゲンノショウコなどだった。
 予想した以上に植生の豊かなところで撮影に思いのほか時間を費やしてしまった。
エンビセンノウ
アサマフウロ
ナガエミクリ
エゾミソハギとシラカバ