八ヶ岳        2004年9月1日〜3日
美濃戸〜南沢コース〜行者小屋(泊)〜赤岳〜赤岳展望荘(泊)〜横岳〜硫黄岳〜赤岳鉱泉〜北沢コース〜美濃戸
 夏の終わりに八ヶ岳に登ってみようと思った。この時期には、まだ出会っていない植物が数多く残されていたからだった。
 たとえばヤツタカネアザミである。八ヶ岳連峰の高山帯から亜高山帯を中心とした地域に普通に分布するアザミなのだが、以前はヤツガタケアザミとされてきた。ところが最近の研究ではヤツガタケアザミは粘る総苞を持つのに対して、八ヶ岳連峰に広く分布するアザミは総苞が粘らないことから1991年にヤツタカネアザミと発表された経緯がある。
 美濃戸から入山して沢沿いの登山道を進むとクサボタンやハナイカリが目立たないが花盛りだった。大きな頭花をつけたフジアザミは花が重たそうだった。タチコゴメグサは小さな白い花を枝いっぱいにつけていた。チョウセンゴミシの果実は赤く色づいていた。
 しばらくして林縁に登場したのは今回の目的のヤツタカネアザミだった。個体数も多く予想した以上の群生が認められた。総苞を観察すると粘らず、総苞片の先は鋭くとがっていた。同時に林縁で見られたのはサラシナショウマ、シシウド、キオンなどだった。
 2日目はあいにくの空模様で降雨が途切れることがなかった。亜高山帯から高山帯に登るにつれて本格的に高山植物が現れ始めた。コバノコゴメグサ、タカネヒゴタイ、トウヤクリンドウなどの花がかろうじて残っていたものの他の花はほとんどが枯れかけていた。思いのほか早く花が終わっていて撮影するのが気の毒なほど痛んでいた。その代わりにガンコウランの黒い果実やコケモモの赤い果実が彩りを添えていた。この日は予定を変更して硫黄岳まで進まずに赤岳で宿泊した。
 3日目は快晴で青空を背景にして咲くトウヤクリンドウ、ウラシマツツジの紅葉、チョウノスケソウの花後のねじれた花柱などを撮影した。ヤツタカネアザミ、ミヤマセンキュウ、オオバセンキュウ、エゾスズラン、ホソバトリカブト、ミヤマヒゴタイ、ノハラアザミ、ゴマナ、ママコナ、ベニテングタケを観察しながら帰途に着いた。想像以上に高山帯の秋の訪れは早かった。
横岳から見た赤岳
ガンコウランの実
コケモモの実
ヤツタカネアザミ
トウヤクリンドウ