高隈山          1988年5月8日
スマン峠登山口〜スマン峠〜小箆柄岳〜大箆柄岳(往復)
 高隈山は大箆柄岳、小箆柄岳、御岳、白岳、横岳、二子岳、妻岳、平岳などからなる連山の総称であり、中腹より上部には森林地帯が広がり自然が残されており、植物の種類も豊富な山域である。代表的な植物には高隈山の名前を冠した、タカクマホトトギス、タカクマミツバツツジ、タカクマヒキオコシなどが挙げられる。またこの地域はブナの南限として知られており、さらにシイ、カシ、タブノキなどの照葉樹の原生林が発達し、「森林生物遺伝資源保存林」に指定されている。
 ちょうど鹿児島に居住していた頃、ぜひとも訪れてみたい場所の一つが高隈山だった。心躍らせて春の高隈山にツツジの花見に出かけてみた。まず山麓で出会ったのはオンツツジだった。オンツツジは朱赤色の花が特徴的で葉の展開前または展開と同時に開花する種だった。
 登山口から登り始めると林縁にちらほらと小さな白い花が表れ出した。よく観察するとウンゼンツツジだった。花の直径が1.5cmほどと小さいことが特徴でいっそうかわいらしく思えるものだ。ウンゼンツツジの花の色は淡紅紫色で伊豆半島、紀伊半島、四国南部、九州南部に分布するとされている。花の色が白いものはシロバナウンゼンツツジと呼ばれ近畿地方西部、中国地方、四国北部に分布して棲み分けていると言われる。そのため高隈山のものはウンゼンツツジとした。
 かなり標高をかせいだ頃にやっと現れ始めたのがタカクマミツバツツジだった。高隈山系の固有種で900m以上の山地に生える種だった。似ているものが多くて判別がむつかしいが、キリシマミツバツツジも開花しているようだった。
 同様に山頂付近の尾根道沿いに現れたのが、ツクシアケボノツツジだった。花期が早いため終わりかけの花が何とか残っている程度だった。鹿児島県では高隈山系だけで見られる種だった。
 ツツジ以外では、ツクシタニギキョウ、キリシマテンナンショウ、ツクシヒトツバテンナンショウ、シコクスミレ、フモトスミレ、ホウチャクソウなどが観察できた。
タカクマミツバツツジ
オンツツジ
ツクシアケボノツツジ
ウンゼンツツジ