那賀川     1997年10月2日,1996年11月12日,1998年11月18日
鷲敷など
 渓流には特有の植物が見られる。これらは渓流植物もしくは渓流沿い植物と呼ばれている。代表的な種としてサツキ、アオヤギバナ、ヒメレンゲ、ヤシャゼンマイなど広く分布する種もあるが、渓流植物の多くはその地域に限られた固有種であることが多い。
 今回紹介する植物も分布の限られた種である。那賀川の名前が冠せられたナカガワノギクは徳島県の那賀川の中流域の岩場でしか見られない植物である。イワバノギクは徳島県で、またトサシモツケは高知、徳島の両県でしか見られない。キシツツジは中国、四国地方に分布する種である。トサシモツケやキシツツジの開花時期は4月から5月だが、狂い咲きで秋にも花が認められた。今回紹介できなくて残念だがナカガワノギクとシマカンギクの交雑種であるワジキギクもこの地域に分布する限られた種である。
 さすがに10月上旬では開花していないだろうと思ったが、予想通りナカガワノギクはまだだった。その代わり名前の分らないキクの仲間を撮影した。後日よく調べると名前が判明し、シロヨメナの渓流型変種といわれているイワバノギクだった。同時に見られたのはマルバハギで紅紫色の花を溢れんばかりにたわわにつけて重たそうだった。
 11月中旬には最盛期のナカガワノギクが観察できた。岩場のあちらこちらで白色の花が微笑んでいた。分布域は狭いが結構個体数は多いようだった。黄色い花はアオヤギバナでアキノキリンソウを小型化したような種だった。青紫色の花が美しいリンドウや花の時期ではないがシランの株も見られた。狂い咲きのキシツツジ、トサシモツケを眺めながらそろそろ引き上げることにした。
 まだ見ていないワジキギクやその他の植物も面白そうな地域であるため、ぜひ再訪したいものだ。
ナカガワノギク
アオヤギバナ
イワバノギク
キシツツジ
トサシモツケ