　東京都内のどこの駅だったか、はっきり覚えていないが構内に貼られたポスター写真を見て愕然としたことがあった。レンゲショウマの花が鈴生りで全面を飾っていたからだった。しかも驚くことに東京都内で撮影されたものだった。それは御岳山の観光ポスターだった。以後ぜひとも観察に出かけなければと思いを巡らせていた。
　念願がかなってレンゲショウマとの対面を果たせたのが2000年8月のことだった。麓の滝本駅から御岳山ケーブルカーを利用して御岳山駅で降りると程なく目的地に到着した。そこにはポスター写真で見た光景と違わぬ光景が展開されていた。時期的にはやや早かったが、それでも咲き始めの新鮮な花たちが風に揺れて迎えてくれた。しばらくはその群生の様子を楽しんだものだった。薄紫色を帯びた優美な花を心置きなく撮影したつもりだった。しかし後日、現像して出来上がりを見ると群生状況がいまひとつ表現されず満足できないショットが多かった。
　御岳山山頂から天狗岩、ロックガーデン方面に足を伸ばすと湿生植物が観察できた。先が二股に分かれた葉の形が面白いギンバイソウが群落を形成しているところがあったが、すでに花は終わっていた。またミヤマタニワタシの花がわずかに咲いているところもあった。他にはハエドクソウ、ヌスビトハギが目立たないが花をつけていた。
　鳩ノ巣駅までの帰路ではタマアジサイ、キバナアキギリ、ナガバノコウヤボウキなどが咲いているのが確認できた。岩場ではフクロシダが岩壁一面を被っていた。
　1998年7月に訪れたときは御岳山麓でヤマユリ、ニガクサなどを撮影した。渓流沿いにはチダケサシ、ヤブカンゾウ、ノカンゾウ、ギボウシの仲間の花がちらほらと見られた。加えてウワミズザクラの赤く熟した実がきれいに並んでいて、意外にも美しいことを発見した。