面ノ木峠       1986年〜2003年
面ノ木峠、天狗棚、木地師屋敷跡など
 紅葉の時期になるとまず訪れるのが愛知県の津具村と稲武町の境界にある面ノ木峠および天狗棚だ。ここは県内でも数少ないブナの原生林が残された地域である。以前は何度も通い、その紅葉の美しさに訪れるたびに感嘆したものだ。
 ブナの黄葉と並んで付近にはカエデの仲間が数多く自生し彩を添えている。たとえばオオイタヤメイゲツ、ハウチワカエデ、コハウチワカエデコミネカエデ、オオモミジ、イタヤカエデ、カジカエデ、マルバカエデウリハダカエデ、ウリカエデ、アサノハカエデ、ミツデカエデ、メグスリノキなどが目にも鮮やかな色とりどりの葉色の変化を楽しませてくれる。
 主役のカエデ類以外にも紅葉や黄葉する植物は多く、ミズナラ、トチノキ、ダンコウバイ、コアブラツツジ、ベニドウダン、ヤマウルシ、ツタウルシ、コアジサイ、シダ植物のシノブなども見事な脇役を演じている。
 林縁ではニシキギ、ツリバナが果実と紅葉を同時に観察できる。ムラサキシキブの紫色の実、ウメモドキやツルシキミの赤い実も鮮やかだ。ミズナラの古木に寄生したヤドリギも目にすることができる。またブナの古木にはヤシャビシャク、オシャグジデンダ、ツキヨタケ、ブナハリタケなどが着いているのが判別できる。
 草花に目を移すと林縁や草原ではリンドウが微笑んでいる。スズカアザミ、ワタムキアザミ、オヤマボクチ、ヤクシソウも盛況だ。足元にはツルリンドウやユキザサが赤い実を輝かせている。木地師屋敷跡には小規模な湿原があり、マアザミ、ヤマラッキョウ、ウメバチソウなどが花を残している。
 またこの時期には津具村や豊根村の渓流の岩場でイワシャジンの釣鐘形の花がいくつもぶら下がっているのが確認できたが数は少なくなってきた。花の形が面白いダイモンソウやジンジソウの花も見つけることができる。
 豊かな自然が残された奥三河の絶好の植物観察スポットである。
紅葉の天狗棚
ブナ
ツタウルシ
リンドウ