犬山、春日井     2012年4月25日
八曽自然休養林
 尾張地方は同じ愛知県にありながら遠く感じてしまう。三河地方には比較的標高の高い山がいくつも存在して頻繁に訪問してなじみが深い。対して尾張地方には標高1000mを超える山はなく、山地の植物を観察するにはあまり適していない。それゆえ訪れる回数も少ない。しかしながら濃尾平野が広がり、いわゆる里山と呼ばれる低山地や丘陵があり、溜池や湿地も点在している。中には三河地方ではなかなかお目にかかれない植物も存在する。
 今回はそんな植物のひとつであるビロードイチゴを観察したくて犬山市の八曽自然休養林を訪れた。川沿いに設けられた歩きやすい小道を進むと小川のせせらぎや小鳥のさえずりが心地良く響き渡った。道端にはタチツボスミレ、マキノスミレ、フモトスミレなどの花やアオキの赤い実が目立っていた。しばらく行くとお目当てのビロードイチゴが白い花をつけていた。思ったより小振りでかわいい花だった。さっそく葉を触ってみると確かにビロードのような手触りだった。付近ではモミジイチゴやニガイチゴも花盛りで3種のキイチゴの花が同時に比較できた。
 今にも咲き出しそうなミヤマヨメナが現れたり、ニシキゴロモ、シロバナニシキゴロモが満開だったりする登山道の頭上にはコバノミツバツツジやヤブツバキが彩を添えていた。八曽自然休養林はシイ・カシ林帯に属するが、この地域の特徴としてウラジロガシやタカノツメが多く生えているように感じた。
 八曽滝付近ではミカワチャルメルソウ、スズカカンアオイなどの地味で目立たない花が認められた。川沿いの湿った岩場にはイワタバコがびっしりと群生したり、ヤブソテツが密集して生えているところもあった。
 カスミザクラ、ビロードイチゴ、ジロボウエンゴサク、スルガテンナンショウ、ヤマルリソウ、タチツボスミレ、ヒメスミレ、ツボスミレ、ニオイタチツボスミレ、ハコベ、ミヤマハコベなどの花が溢れる中を帰途についた。
 里山の春を満喫できた一日だった。
ビロードイチゴ
モミジイチゴ
ニガイチゴ
アオキ
コバノミツバツツジ