伊那谷       2009年7月20日-@
ニョホウチドリの巻
 ランの仲間には美しい花を咲かせる種が数多くある。大きくて目立つ花と言えば、まずクマガイソウやアツモリソウの仲間が挙げられる。多彩なエビネの仲間も人気が高い。一方、小型ながらウチョウランの仲間は形態的にも変化に富んで園芸的価値も高い。今回取り上げるニョホウチドリはウチョウランと同様にハクサンチドリ属に含まれる。ウチョウランに似ているが、花はやや大きく、紅紫色の艶やかな美しいランで亜高山帯に咲く。ニョホウチドリという和名は日光の女峰山にちなんで付けられたといわれる。以前に見かけたことがあったが、そのときの美しさは今も忘れずに記憶に残っている。
 ニョホウチドリの花を求めてある場所に向かった。亜高山帯まで辿り着くと深い樹林帯が続いていた。コメツガ、トウヒ、オオシラビソ、ウラジロモミなどの針葉樹が見事な樹林帯を形成していた。コケむした林床にはシラネワラビなどのシダが生い茂り、一画にはゴゼンタチバナが小規模ながら群生し素晴らしい雰囲気を醸し出していた。
 林縁や開けた草地および岩礫地では様々な植物が花盛りを迎えていた。クリンソウ、バイケイソウ、ウスユキソウ、シロバナノヘビイチゴ、コバノイチヤクソウ、ヤグルマソウ、ヤマタイミンガサ、キリンソウ、ミヤマコウゾリナ、タカネグンナイフウロ、エゾムカシヨモギ、ミヤママンネングサ、ミヤマミミナグサ、イトイ、センジュガンピ、ヤマブキショウマ、ミヤマハタザオ、ミヤマカラマツ、ホザキイチヨウラン、クモキリソウ、アスヒカズラなどが観察できた植物だった。
 その中にニョホウチドリの鮮やかな花が点々と咲き誇っていた。濃紅紫色や淡紅紫色など花の色には多少の変化があるがいずれ劣らぬ美形ぞろいだった。
 川沿いに降りてくるとサワグルミの大木が数え切れないほど多くの果穂をたわわにぶら下げていて目を引いた。
ニョホウチドリ
ゴゼンタチバナ