葦毛湿原       1982年、2010年〜2012年、2016年
湿原回遊路、後背山地、周辺池畔など
 2016年4月下旬に久しぶりに葦毛湿原を訪れて驚いた。湿地内外の樹木がかなり伐採され、表土が剥がされて、湿地を回復する作業が大々的に行われていたのだ。以前から小規模なものは実行されていたが、これほど大規模なものは想像できなかった。
 自然の遷移により、湿原は次第に失われて、草原となり樹林に移行していく運命にある。葦毛湿原は、イヌツゲなどの樹木が繁茂してかなり危機的状況にあった。とは言え、人手が大きく加えられてどこまで湿原が回復できるのか推移を見守りたいものだ。
 さて今回はスゲを中心にして紹介してみたい。早々と湿原で開花するのはショウジョウスゲだろう。かなり適応力があるのか、亜高山帯でも見かける種だ。ヤチカワズスゲも湿地ではお馴染みの顔ぶれだ。
 他にもシラコスゲ、コジュズスゲ、ゴウソ、ホナガヒメゴウソ、クサスゲ、アゼスゲ、タニガワスゲ、ヤマアゼスゲオタルスゲなどが次々と開花して賑わいを見せる。カサスゲは池の畔で群生している。
 しばらくしてタチスゲが咲きだすとスゲの季節は終わりを迎える。
 後背山地に目を移すと、樹林下でケタガネソウ、ヒメカンスゲ、ヒナスゲなどが咲き始める。ヒナスゲはサナギスゲと混同しやすいが、雌雄異株なので見分けられる。乾燥した尾根筋ではモエギスゲヒカゲスゲ、アオスゲ、メアオスゲ、アズマスゲなどを見つけることができる。
 それら以外にもシラスゲ、マスクサなどかなり色々な種類を目にすることができる。
 秋に咲くスゲは種類が少なく、ナキリスゲが見られるくらいだ。
 最後に葦毛湿原のかつての姿を紹介したいと思う。左の写真は1982年10月に撮影したものである。ミカワシオガマの群生が見られた頃の様子が写っている。失われた湿原植物がどこまで回復できるのか期待したい。
ミカワシオガマの群生(1982年)
ホナガヒメゴウソ
ヤチカワズスゲ
表土の剥ぎ取られた葦毛湿原(2016年)