敦賀   1995年4月14日, 1994年5月21日, 2007年9月17日, 2001年9月22日
池河内湿原
 福井県敦賀市には市街地近郊にありながら貴重な自然が残された湿地がいくつかある。そのひとつ池河内湿原は市街地から北東へ6kmほどの距離にある山間に開けた標高300mほどの低層湿原ではあるが、その一部は高層湿原の様相を呈している。そのため多様な湿原植物の群落が形成され、ミツガシワ、ヤナギトラノオ、カキツバタ、ヤチスギラン、ミズドクサ、ヒメザゼンソウなど希少な植物が自生している。湿原はハンノキ林が主体で端にある阿原ヶ池にはヨシやスゲ類が生茂り池の面積がだんだん狭められている。
 春にはサワオグルマやミツガシワが群生し、ハンノキ、スミレサイシン、ネコノメソウなどの花が見られた。5月下旬になると湿原周辺ではタニウツギが満開となり枝をしならせていた。湿原に入ればヤナギトラノオとカキツバタが見事に群生し競演していた。ドクゼリも大きく成長して白い花をふんだんにつけていた。ミズタビラコは見逃してしまいそうな小さな花だった。
 9月中旬以降は湿原に秋の花たちが咲きそろい鮮やかな光景を演出してくれていた。川のほとりにはミクリやフトヒルムシロの地味な花を見つけることができた。シロネとヒメシロネが同じ場所に生育し、形態の違いを直接比較することもできた。他にはマアザミ、コバギボウシ、サワヒヨドリ、ミゾソバ、ヤノネグサ、アキノウナギツカミ、ミソハギ、ヨシ、マコモ、サワギキョウ、コケオトギリ、アカバナ、オオニガナ、アメリカセンダングサ、イボクサなど雑多な植物が湿原を埋めていた。ガマの穂、サンカクイの実、ミヤマウメモドキの赤い実も確認できた。湿原の周辺ではツリフネソウ、ユウガギクが花盛で、ミヤマフユイチゴの花も咲いていた。周辺林ではニホンザルの群れが餌をあさって騒ぎ立てているのを目撃した。熊も出没するようでクマ注意と書かれた看板があった。
 木道や遊歩道が整備され、数年前にはトイレが設けられたが、それ以外は人手が加わらず自然のまま残されている。湿原の植物たちが四季折々にありのままの姿を見せる類まれな観察地である。
マアザミ
オオニガナ
カキツバタ
ヤナギトラノオ
シロネ