段戸        2011年6月9日、2010年7月10日
段戸裏谷
 段戸とは単に段戸山だけでなく、寧比曽岳、出来山などを加えた高原状の地形の総称を意味している。これらが集まって段々に重なったという意味で段戸の名前が付けられたといわれている。中でも段戸裏谷と呼ばれる地域には愛知県には数少ない温帯性の原生林が残されている。ブナ、ミズナラ、モミ、ツガ、ミズメなどの大木が聳え、オオモミジ、コハウチワカエデ、イヌシデ、アカシデなどが混じるいわゆる太平洋型ブナ原生林を形成し植物の種類も豊富である。この段戸裏谷原生林は通称「きららの森」と呼ばれている。
 ところで最近はスゲに興味が沸き、はまっている。ホソバカンスゲは主に日本海側に分布するが、県内では段戸裏谷と本谷にのみ自生するといわれている。このホソバカンスゲを求めて出かけ、スゲの仲間を中心にして散策を試みた。種名の間違いなどあるかもしれないが観察できた種類を挙げてみた。
 段戸裏谷の入り口には段戸湖が静かに水をたたえていた。人造の堰止め湖とはいうものの高原の落ち着いた雰囲気を漂わせていた。周辺の湿った場所にはゴウソ、ホシナシゴウソ、ヒメゴウソ、オタルスゲ、ミヤマシラスゲ、ヒカゲシラスゲ、ビロードスゲ、ヒカゲハリスゲなどが散見された。
 原生林を観察するための遊歩道が整備されて歩きやすいが林縁や林内の湿ったところにはカンスゲ、ホソバカンスゲ、コカンスゲコミヤマカンスゲ、カワラスゲ、ヒゴクサ、ホソシラコスゲ、タマツリスゲ、イトアオスゲなど数多くの種類が認められた。ここではカンスゲとホソバカンスゲが混生しているので見分けにくいが、葉が細いものをホソバカンスゲとして区別した。またカンスゲでは雌果胞の嘴や鱗片が褐色を帯びる傾向があるが、ホソバカンスゲではその程度が低いと思われた。
 スゲ以外の植物で開花していたのはヤブウツギ、ヤマツツジ、ベニドウダン、ズミ、カキツバタ、ノハナショウブ、ギンリョウソウ、ツルアリドオシ、ミヤコイバラ、ハルガヤなど。シダ植物ではマンネンスギ、ヒカゲノカズラ、イヌガンソク、サトメシダ、ヒメシダなどが目についた。
ブナ
ホソバカンスゲ
ギンリョウソウ
ベニドウダン