朝熊山          2014年5月25日
金剛證寺、経塚群、朝熊山頂、朝熊岳道、宇治岳道など
 朝熊山を代表する植物のひとつはジングウツツである。伊勢神宮付近の蛇紋岩地に見られるツツジの仲間である。その特徴として樹形は上部で枝分かれして、枝はやや水平に伸びる傾向がある。葉は3個輪生し、中央部が最も幅が広いとされる。
 ところで静岡県と愛知県の県境付近にも蛇紋岩地は存在し、シブカワツツジが自生している。シブカワツツジはジングウツツジの変種とされ、これら2種の区別点は以下のように記載されている。シブカワツツジの特徴は枝振りが横に広がらず上に伸びる傾向が強いこと。葉は3個輪生し、中央よりすこし下が最も幅が広いこととされている。
 実際に観察したところあまり明確なものではないような気がした。ここでは朝熊山に自生するものはジングウツツジ、静岡県と愛知県に自生するものはシブカワツツジとした。
 朝熊山のジングウツツジは宇治岳道方面で所々に見られた。花の色は鮮やかな紅紫色だった。山頂周辺には少なかった。
 朝熊山は蛇紋岩でできているため、その他にも変性を受けた植物が見られた。シュンジュギクは代表的な種だ。ミヤマヨメナが蛇紋岩地帯で小型化したものだ。ここでは草丈が10cm程度と低く、頭花の直径も2cm以下と小さく、全草が紫色を帯びる典型的な個体が多く認められた。
 同じく蛇紋岩地帯で見られるツゲが自生していた。花の時期は3月頃と早いので今回は新芽が伸びてきたところを撮影した。また改めて花の写真を撮影することとしたい。当地ではアサマツゲと呼ばれているらしい。
 ヤブイバラは近畿地方以西に見られるノイバラの仲間だ。中央構造線より南に分布するということで、朝熊山はちょうどこの地域に当てはまる。花の直径は1.5cmほどと小さく、やっと開花したばかりだった。最盛期はもう少し後になるだろう。他にはゼニバサイシン、ガンピ、マルバウツギ、ハルリンドウ、ギンリョウソウなどが咲いていた。
 蛇紋岩地に咲く植物を満喫した一日だった。
ジングウツツジ
シュンジュギク